「あっ、吉野君(ヨシノノキミ)だ、お〜い」

「え？瑠璃姫？
　どうしたんだ？お供も連れずにこんなとこへ」

「連れてるよ。お供じゃないけどね。」

「え？」

と、レンの存在に気づく

「おまえは？」

聞かれてもレンは首をかしげたまま、何も言わない。

「どうしたの？吉野君？
　レンちゃんじゃない。」

「ああ、そういえば、
　はて？何で忘れていたんだ？」

唯恵は頭の上にハテナマークを具現化した。
瑠璃はおもわず拍手をした

「お？お？」

レンが瑠璃の着物の袖をひっぱっている

「ん？どうしたの？」

「ふむふむ」

レンの口は動いていないように見えるのだが、瑠璃はレンの声が聞こえているようだった。

「それはね
　瑠璃がはじめて吉野君に会ったのが吉野だったからだよ。
　あのときは名乗ってくれなかったの。
　だから瑠璃が吉野ってつけたげたんだよ。
　で、吉野(乃)君。」

どうやら瑠璃が唯恵のことを「よしののきみ」と呼んでいることが気になったようだ。

「今はもう名前も知ってるんだけどね。
　吉野君のほうが呼びやすくて」

瑠璃はてへへ〜と笑っている。

「ところで、お二人は何でこのようなところに？」

「え？吉野君に会いに来たんだよ」

「それはそれは、俺になにか用かな？」

「え？」

その場に沈黙のメシアが・・・もとい沈黙の時間がしばらく続いた。

「俺に用があったのでは？」

「ううん」

「あ、そうですか」

「来ちゃだめだった？」

「いいやいや、滅相もない
　俺も瑠璃に会えて嬉しいです。」

「ほんと？」

瑠璃はえへへ〜と真っ赤になってにやけている

「あ、ところで」

唯恵は話題を変えようとした

「え？なになに？」

瑠璃は期待に胸を膨らませている。
ちなみにそんなにおおきくない。

「レンはあの村で何をしていたのだ？」

レンはとくに村の人に危害を加えたりはしなかった、
だが魔であるために村の人はレンを恐れていた。

あの村で何をしていたのか？何のためにあの村に来たのか、唯恵は聞きたかった。


瑠璃は機嫌を悪くした。

「なによー。そんな話ー？」

「う、どうかしたのか？」

明らかに機嫌の悪い瑠璃を見て、唯恵は少したじろいでいる。

「別に。どうもしないもん」

オトメ心は面妖なものらしく。

「どうもしないって、なんか怒ってるじゃないか」

「怒ってないもん」

「すいません、俺が浅はかでした。
　機嫌をなおしてレンに聞いてみていただけないでしょうか？姫？」

瑠璃はつーんとしている。そっぽを向いている。
レンは修羅場を初体験し、ＬＶがあがった。またひとつ人の心を理解した。



「レンちゃんは主人を待ってたんだって」

「え？主人って？」

機嫌をとるだけで疲れきってしまっている。

「レンちゃんの主人」

「レンは結婚していたのか」

「じゃなくて」

「え？こんな幼いのに？不憫な」

「は？なにが？」

レンは怒った

「痛て痛て痛て！悪かったよ。
　しかし、主人っていったら普通はだんなの事か、奴隷のだろう」

唯恵は５ＨＰのダメージを受けた

「ひっどーい、レンちゃんをそんなふうに見てたの？」

瑠璃も怒った

「えい」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」

唯恵は見るも無残な姿になった。



「レンちゃんは、そのご主人様の使い魔なんだって」

いつのまにか体が元通りになっていた

「それより、ここは夢の中だったのか」

「そうだよ。気づいてなかったの？」

唯恵は夢獄＝夢隠の術のため、自分の夢を見たことがない

「どおりで簡単に肉塊にされたり、すぐ戻ったりしたのか」

「そうだよー」

「で、使い魔ってことはその主人からなにかやらされてたのか？」

その主人から人間を襲うように命令されたのではないのか？と唯恵は考えた。

レンは首を振った。

「え？じゃあ、おまえの主人の目的は？」

まだ首を振っている。

「おい」

レンは首を横に振っている。

「こら」

唯恵はツッコもうとしたが、
瑠璃が夢を操り唯恵の振り下ろそうとしたハリセンを消してしまった。


「話が続かないだろう？」

「そんなに質問責めにしなくてもいいじゃない」

「だが、その主人とやらも、魔、なんだろ？」

唯恵はまじめな表情でレンを睨んだ。

「ん、ん〜」

瑠璃はまじめな雰囲気にとまどっている。
背中がかゆいようだ。

レンは瑠璃に自分の意思を伝えるときと同様に、唯恵にレンとその主人のことを話した。




使い魔とは、術者が作り出した人形と、契約により術者の命令をきく魔と二種類がある。
レンは後者で、主と契約することで主の命に従うタイプである。
レンの主人は強力な魔の一種で、他者の血を吸うことで、その者の精神を操れるようになるらしい。
レンは血を吸われたわけではなく、以前の主人が亡くなったため、行動を供にしているだけらしい。
使い魔は契約した主人から力をもらわないと存在し続けられないため、仮契約をしていた。
現在は主人が強力な相手と戦闘中なので離れているということだ。
主人がレンを見つけるまではこのままらしい。
だが戦闘が終わっても急いでレンを探そうとはしない性格らしい。



「ん〜」
唯恵は一通りレンの話を聞いて、少し不安に思った。
レンの主人は強力な魔。
他者の精神を操る。
いずれレンのとこに来るかもしれない。

そのとき、その魔はどうするのだろうか？
レンはすでに瑠璃の夢の中に閉じ込めてしまっている。




ここまで書いて矛盾したことに気づいた(;_;)