−夢守ー

竜巻の音がしない
神奈の力で竜巻の轟音が消えている
でも幻ではない。
周りの岩や地面そのものまで舞い上げようとしている。

竜巻を間に向かい合う瑠璃と神奈。

神奈は確かに言った。
魔が夢を渡り、人の命を殺めていると。

「そんなことはないわ。
　閉じ込められた夢から、魔が抜け出すなんて今までなかったもの」

そう。
どんな強力な魔でも夢の中から出てきたという話は聞いたことがなかった。
夢守の一族にとって神奈の話はとても信じられないものだった。

「そなたたちには感じたことがないのか？
　邪悪な波動が、寝入った者たちの｢気」を伝い、次々に移動する様を。」

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その魔はどのような力を使ったのか？

人の脳から脳へ、脳波から脳波へ、

まるで音叉が響きあうように、

遠くで寝ている人間の脳波を同調させ、自分の存在を強力な電波のような
ものに変えて一瞬に移動する。

神奈は魔の移動を、邪悪な波動が人から人へと移っていくのを感じることができた。

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「そんなことないもん。
　どうやったら夢から夢へ渡れるというの？」

瑠璃はせいいっぱい否定した。
いや、否定したかった。

だが、気持ちのどこかで、神奈が嘘をついていないと確信してしまっていた。

瑠璃は、今まで夢守の一族が、魔とどれだけ過酷な戦いを繰り広げてきたかを
思うと、頭ではわかっていても感情を抑えられなかった。

「そなたも気づいていたのであろう？
　罪を認め、悔い改めるがいい。
　さすれば黄泉の旅路も少しは受け止められよう。」

神奈が攻撃する気配を見せた。

だが瑠璃は精一杯訴えようと身を乗り出して叫んだ。

「あたしたちはみんなを護るためにずっと頑張ってきたのよ！」

唯恵たちが瑠璃の前に立ち、瑠璃を背にして護ろうとした。

「黙るがいい。
　どんな理由があろうと貴様達を生かしておくわけにはいかん」



ゴッ！！！



「気烈！！」


神奈の掛け声とともに、見えない刃が牙を向いた。

竜巻を触媒にして生まれた巨大な真空の剣。

巨大な岩までも瞬時に通り抜け、鋭利な切り口を見せる。

その透明な死神の鎌は

瑠璃はおろか唯恵すらも気づかない速度で

瑠璃の両肩をかすめていった。



さくっ



まるで調理される野菜が包丁で切られるときのように

軽い音がして

両の腕が飛んでいった。



夢守の村で一番切れる剣でも牙羅には少し食い込んだだけで切れなかった。

亜紋にいたっては食い込みもしない。はじき返してしまった。

唯恵は切られてもすぐに治ってしまう。

だが、

今、瑠璃の前で

３人の体は人の形をしていなかった。