−夢守−

ふふふ

たのしいね

なんでかな？

ころころ

ころころ

こころがまわるの

たのしいね

あの人に言いたいな

あの人に伝えたいな

あの人にも楽しんで欲しいな

一緒に楽しくなりたいな

うふふ



でもあの人はもういない

あの人の頭が転がる

ころころ

ころころ

くびからしたがないの

あたまだけのあのひと

ころころ

ころころ


♪あんたがたどこさ♪


うふふ

くすくす

いっしょにあそぶ？

ねえ？

あたしに話しかけて

あたしに笑いかけて

あたしを見て



いなくならないよね？

ずっといっしょだよね？

あのひとのあたまがおしゃべりしてくれるの

あたしはいいこだから、いうこときくよ

あたしはいいこだから、おいてかないで

でもあのひとは

とおくへいくっていうの

「瑠璃姫。これ以上あなたの傍にはいられないようです。
　どうかわたしがいなくても強く生きてください。
　生きてください。
　わたしのことは−」

やだ！

やだよ

いっちゃやだ

おいてかないで

るりもつれてってーー！！

くるくる

くるくる

まわるよ

まわってるよ

アノコ、キライ

るりのまわりをまわってる

くるくる

くるくる

ふわふわ

うふふ

ねえ、あそんでよ

まわるよ

まわる

アノコガコロシタ

るりにいっぱいはなしかけてる

おしゃべりしたいのね

よくきこえないよ

ナキサケベ

もっとまわしたげる

く〜るくる

びゅ〜ん

あははっ



ぐちゃっ



オカシな声が聞こえたよ

あの子はヘンテコな声で喋ったの

なんて言ったのかわかんない


もう何も言わなくなった



♪やねまでとんで、こわれてきえた♪



あの子が壊れたの

どこが手だったのか
どこが頭だったのか

あの子は死んじゃったの

あの子を殺しちゃったの

るりが

瑠璃が殺しちゃった

え？

なんで？

だれを？

だれだっけ？

たしか、そう

「神奈」

そう名乗ってた

確か

「神など無し」

って名づけられた子

「神奈」

誰かが余を呼んでいる？

余の名前は嫌い

「かんな」

ははうえ？

どこ？

もう顔も思い出せない。
あの頃はちいさかったから。

人間が嫌いだったははうえ。

神という人間を怒ってばかりいたははうえ。

「神なぞ、おらぬ」

「このこは神などではない！」

ははうえが泣いている。

ははうえ。ははうえ。

どうして殺しちゃったの？

わかんない

思い出せない

思い出したくない

考えちゃダメ

思い出しちゃダメ

ﾖｼﾉﾉｷﾐ
吉野君・・・

ﾕｲｹｲ
唯恵・・・

今でも吉野で遊んだときのことをはっきり思い出せる

子供心に約束した誓いも

接吻も知らなかったあたしも

あんまり楽しかったから

あまりにも綺麗な思い出だったから
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾖｼﾉﾉｷﾐ
あたしより背が高くなったあなたに会っても、ずっと吉野君って呼んでた

あなたは優しく微笑んで、あたしを見てくれた

とても嬉しかった

大好きだった

あ・・・い・・・してた

さらさら

やさしい風が頬をなでる

周りには何も無い

なにも

夢守の村から森に抜けて間もなかったはず

あれほどの広い森がなくなっている

村の跡もわからない

神奈の竜巻で吹き飛んだ木々よりも、もっと広い範囲で森がなくなっている

瑠璃はそんな荒れ果てた荒野に一人立っていた


瑠璃は精一杯声を出して泣いた。

流れる涙も構わず、心のままに泣いた。


大好きな人が死んだ。

怒って人を殺してしまった。

なんでこんな力を持ってしまったんだろう？

人を殺す力なんかいらなかった。

人を救う力が欲しかった。

だが自分がやったことは、救いからは程遠い。

夢と現実の境が見えなくなった。

夢の中なら・・・死んだあの人と話が出来る。

安らかに死んでいくはずだったあの人の魂を無理矢理呼び戻してしまった。

強く生きろと言ったあの人の言葉に反して、怒りにまかせて人を殺してしまった。

しかも人の命をもてあそんだ。

あそんで、たのしんで、人の命を壊した。

こんな自分がいたなんて知らなかった。



大好きなあの人はもういない。

あの子の夢を見ていた。

いや、きっと神奈が最後に会いたいと思っていた母親のイメージを。

瑠璃よりちいさかった。まだ幼さが残っていたのに。

「神なぞ無し」

この名前には母親の思いが込められている。
よほど酷い扱いを受けたのね。

人間の女の子として生きて欲しかった。

そんなことは知らない人間は、「かんな」という名前を神を意味する名前にしてしまった。

物心つく前から母親と引き離された。

神にふさわしくないことをすれば怒られた。
遊びたいと言ったら閉じ込められた。
眠たいと言ったら水をかけられた。
走ったり木に登ったりしたら食べ物がもらえなかった。
外には出してもらえなかった。
怖い人が体中を撫でまわした。
痛いと泣いたら、喜んだ。

ときどき広い、人間がいっぱいいるとこで、じっとしてないといけなかった。
みんな頭をあげたりさげたりしてた。

なんか、瑠璃に似てるね。
瑠璃はよく外へ抜け出してたけど。
瑠璃は違う子だから。

神奈は瑠璃なの。
おんなじなの。

でも、瑠璃が、殺しちゃった。
ううん、きっと「死ぬ」こととは違う。
でも、もう、神奈は生きることは出来ない。

瑠璃はその後、夢の世界を漂うようになった魔を追い、消していった。

泣きながらさまよっていたが、あまりにもつらいので夢の中に記憶ごと閉じ込めてしまった。

つらい記憶から逃げたかったから夢に封じ込めた。

当然夢も見ない。

なぜ泣いてたのかもわからなくなった。

自分の名前も忘れた。

でも夢に逃げた魔の者達を許せない気持ちは残った。

みんなを護りたい気持ちは残った。

何度も桜が咲き、何度も雪が降った。

このまえ会った子供が老人になって、その子供もいつのまにか年老いて、
そんなことを何度も繰り返した。

いつか、みんなが自分の見たい夢を見れればいいな、と思う。

いつか、素敵な夢が見てみたいな、と思う。

そんな麗しい夢を願って。






いつしか、麗夢と名乗るようになっていた。