−酷夢ー

麗夢の悲鳴が響いた。

美奈の夢が、大好きな人の悲鳴に反応する。
だが、すでに美奈は自分の意志を持っていない。
だというのに、美奈の力は、美奈の意思とは関係なく動いた。

周りから光が集まってくる。
光り輝く。
それはちょうど三日月を２つ重ねたような光になった。






一筋の光が夢魔の体を貫いていた。






「くっ」

三日月は光線となり、夢魔の体を貫いていた。
瞬間や刹那という言葉でも間に合わない速度で。
その光線が走るときは時間が止まっていたのではないか。




だが、体を貫かれても夢魔はおちつきをはらっていた。
貫かれたはずなのに傷ひとつ残っていない。

「ふふ、そんな状態になっても、まだこんな強力な危機を紡ぎ出すことができるのね」

夢魔はその結果に満足そうに、麗夢に見せつけるように、口の端をつりあげるように笑いかけた。

「ほらみなさい。あなたが心配せずとも、あの娘はまだこんな余力を残しているじゃない」

「美奈ちゃんっ！お願いっ目を覚ましてー！」
「美奈殿っ気を確かに持つのですっ」
「幻なんかに負けちゃだめーー！」

だが、美奈の意思はすでに消えていた。

「あの娘はじきに死ぬ。
　ときおりおまえに反応しておまえを助けようとするが、　そんな反応も弱くなっていっている。
　もはや意識も確立していまい。
　おまえらがどんなに叫んでも聞こえていない。
　時間の問題だ…
　あの娘は絶えられまい。
　見ろ、この芸術ともいえる死のイメージ！」

夢魔はなかば恍惚とした表情でソレを見つめる。

そして、自分の作品をより美しく観せるために、ソレを切り刻んだ。




サクッ

「−−、

　　　　　　　　　　　　　　　さくっ

　　　　　　　　　　　　　　　−−、

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　サクー

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　−−」






麗夢はたまらず涙声になりながら叫んだ。

「やめてーーー！」

すでに悲鳴さえあげないーーソレを切り刻むのを止め、麗夢をにらみつけた。

「麗夢、おまえを苦しめるためには、おまえ自身よりもこの娘を傷つけるほうが効果的なのさ」

「やめてっ！わたしも知らないってさっきから言っているでしょう！
　わたしを殺したいのなら、わたしを傷つければいいでしょう！ーー





ーーもう美奈ちゃんを傷つけるのはやめてーーー！」