−酷夢ー

イタイ・・・
スゴクイタイ・・・

ッ！

ッ！

ッ！

イタイヨ

どこがいたいのかな？
ゼンブイタイ

ぜんぶって？
ワカンナイ

おなか？

おてて？

あたま？

ワカンナイヨ
イタイヨ
スゴクイタイヨ

イタイヨイタイヨイタイヨイタイヨイタイヨイタイヨイタイヨイタイヨイタイヨイタイヨイタイヨイタイヨイタイヨイタイヨイタイヨイタイヨイタイヨ

痛みしか感じないの。
体の感覚が全て痛みで支配されているの
体中に力を入れている。多分わたしは暴れている。あがいている。
叫んでいる。言葉にならない声をあげている。わたしには聞こえてないけど・・

聞こえていないどころか、なにも感じないよ
見えない、感触がない、浮かんでいるみたい

あるのは痛みだけ
何もできない
ただ痛いだけ。　　　すごく。

なにがあったのかしら？

痛い。
痛い。



痛い。




なんだろう？
わからない

痛い



ワカラナイ


なにが？

ナニ？



イタイノ、イタイノ

なにか


イタイイタイイタイ


考えようとしてた？


タ




タスケテ












この痛みが始まってから、交互にくりかえしている

考えようとする自分と
コワレヨウトスル　アタシ　ト


いっそ壊れたほうがラクかもね・・・ふふ

ククク・・・


あ、考えられてる。
痛みに慣れたのかしら？・・・そんなことがあるのかな？
でも痛いのは消えてない。
わたしって結構強かったのね・・・ふふふ

ケケケ・・・

あら？わたしがもうひとりいるみたい

壊れそうなアタシ

それとも、壊れてるのかしら？とっくに・・

ふふふ


痛い・・・
なんでだったかしら？
いつからかしら？

ワカラナイ・・


思い出すのよ。
痛みから解かれるかもしれない。

イタイヨ・・・


思い出して、あたし。

ガンバッテ

そう、がんばって

ハヤクシナイト

え？はやく？どうして？



「がんばって！美奈ちゃん！」



イマ

ナニカ

キコエタ





光が見えた気がしたの。

痛いのがあそこから来てるように思えたの。

光が見えた気がしたとき、

光に照らされて、

影ができたような



アレヲ

やっつければ

コワセバ



殺せば




ワタシはすごい力であそこを貫こうとした

なにをしたんだろ？よくわからない
わたしはこんなことできない。できなかったはず。

でもワタシはナニカをしたようだ

貫いた瞬間少し痛みが和らいだ気がした

もっと
もしかしたらこの痛みが消えるかも・・・




あれ？

でもアタシがいない

あたしとは別の、ちょっとアブナイ感じのアタシがいたような気がしたのに
感じなくなった






さくっ

あぅっっっっっ！！！


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さくっ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きゃぅぅぅぅぅっっっ！！！


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さくっ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ！！！




いきなり何かに切り裂かれたような感触に襲われた。

あそこと

むこうと

あっちのあたりで

でもどれもがすごく、すごく、すごく痛かったっ


なんでだろう？
なにがあったんだろ？

すごく痛いよ

誰か助けてよ・・






わたしは夢魔に殺されようとしていた。
正確には拷問を受けていた。
麗夢さんになにかをさせるために。
わたしをばらばらに切り裂いたのだ。

夢の中だから、ほんとの体は傷ついていない。
でもわたしが、この死のイメージに負けたら、わたしの心は死んでしまう。

それは本当の死につながる。


死んでないのはきっと麗夢さんが守ってくれてるからよね？
ときどき麗夢さんの声が聞こえる気がする

あたしも麗夢さんを助けてあげたい。
夢魔なんかやっつけてあげたい。

でもあたしには何もできない
ただ泣いて、助けを求めることしか・・・


でもあたしはまだ気づいていなかった。

アタシの存在に

アタシがなんなのか気づいていなかった。



「アタシ」、それはあたしと同じ思考を持つ「力」。

あたしの意思が壊れないように支え、
夢魔を攻撃し、
麗夢さんのことが大好きな、

あたしの、夢を操る、夢を創る、すてきな、素敵な、ちから。


待ってて、麗夢さん、きっとこの夢から開放してあげるから。