ガタン、ゴトン・・・
麗夢と美奈は電車に乗っている。
２人でコ□◇に行こうとしていた。
「え〜？麗夢さん行ったことなかったんですか？」
「うん、なんか怪しいオーラが何キロも離れてるのに感じることができるし、
あそこに向かう人達もみ〜んな異様な気配を漂わせているんだもの」
「あははっそうかもしれませんね」
だが、美奈は笑いながらも、麗夢の言うことがあながち間違いじゃないことに
とまどいを隠せないでいた。
「なんか混んできたねー」
「ええ、きっと皆さん同じとこへ向かってるからです」
「ふ〜ん、そんなに楽しいんだぁ」
「ええ、きっと麗夢さんも・・・
・・・楽しんでくださいね」
「美奈ちゃん、なんか日本語ヘンよ？」
だが、混雑はどんどんひどくなり、しだいに身動きすらまともにとれなくなってきていた。
「う〜・・・苦しい」
「助けてー麗夢さ〜ん」
「美奈ちゃん、もう降りましょうよー」
「降りたくても動けませんー」
「う〜、もうだめ〜」
麗夢が満員電車のなかで息をひきとろうとしたそのとき、
（ん？・・・）
誰かの手のひらがぴったりと麗夢のおしりにくっついていた。
（なに？ちかん？）
手を動かしているわけではないが、ずっとくっつけたままでいる。
しかも手の甲ではない。
混雑しているのでつい手を出してしまうこともある。
麗夢はそう思うことにして、ぐっと我慢していた。
手を動かさなくとも、触っているだけでも気持ちよかった。
心臓がどきどきいっている。
やわらかく、ぷにぷにとした感触がある。
抵抗はない、気づいていないのだろうか？
いや、気づいていないはずはない。
内気な少女なのだろうか？
それとも、悪気はなくつい触ってしまったのだと思っているのだろうか？
どちらにしても、このすぐ後にでも声を出されるかもしれない。
それか周りの人に咎められるかもしれない。捕まってしまうかもしれない。
だが離せないでいた。
手を動かしたい気持ちを必死で抑える。
電車が揺れるたびに柔らかい感触が伝わってくる。
心臓の鼓動は激しく、体は熱くなっている。
頭に血がのぼり、すぐにも理性が消えてしまいそうだ。
（確かに、確かに少女のおしりに触っているんだ）
（麗夢さん、麗夢さん）
美奈が聞こえるか聞こえないかのか細い声で麗夢を呼んでいる。
麗夢がその声に気づいたのは、美奈が何度か呼んだ後だった。
「な、なぁに？美奈ちゃん？」
「あ、ん、あの・・」
だが、美奈はそわそわとしているだけで、なかなか話そうとしない。
「え？なに？どうかしたの？」
「・・・・・」
美奈は顔を真っ赤にして、うつむいている。
体をもじもじと小刻みに動かして、体中がこわばっている。
手に持っている鞄をぎゅっと胸の前で抱きしめている。
明らかにおかしい。
麗夢は美奈に何事かが起きていることに気づいた。
その瞬間、麗夢は自分と同じように、美奈も誰かに触られているのだと直感した。
声を出したら、麗夢だけではなく美奈も、周りの好奇と恥辱の視線を浴びるだろう。
麗夢は力づくでこの混雑した電車から脱出しようと考えた。
誰かがおしりを撫でている。
ときどき、つん、つん、とつついてくる。
美奈は身の毛もよだつ感触を感じながらも、恐怖で動けないでいた。
気持ち悪い。
怖い。
おぞましい。
頭がパニックを起こしている。
今すぐ逃げ出したいのに、混雑していて逃げられない。
声を出すのは恥ずかしくてとてもできない。
ちょっとでも声を出そうものなら、その途端、周りから恥ずかしい目にあっている自分を見られてしまう.
（麗夢さんが気づいてくれた。
夢の中ではあれほど強かったんだもの。きっと助けてくれる。）
麗夢の表情は怒りに満ちている。
美奈にもわかるくらいのエネルギーの波が感じられる。
何をするのかはわからなかったが、きっと助けてくれると思い、麗夢を見つめていた。
まだ中学生くらいだろうか？愛らしい少女が目の前にいる。
混雑がひどい。少女は身動きすらできずにいる。
さっきから腰のあたりに、少女のおしりがあたっている。
なんともいえず、柔らかい、気持ちのいい感触が伝わってくる。
少女は混雑の中、鞄をぎゅっと抱いて、うつむいている。
こういうおとなしいタイプには弱いのだ。
手の甲でおしりを触ってみる。
あまり自分からは動かさず、電車の揺れに合わせるようにさする。
少女はあいかわらず、周りの圧力に耐えている。
柔らかい・・・
ぽにょぽにょと音がしそうなくらい、心地よい感触が返ってくる。
手の甲をかえして手のひらで触ってみる。
ぴったりとくっついてみる。にぎったりはしない、あくまでも手はひろげたままだ。
手の甲よりもはっきりと感触がわかる。
服の上からだというのに、手に吸い付いてくるようだ。
少女はあいも変わらずである。
さすがに気づいているとは思うのだが。
もう少し大胆に触っても大丈夫かもしれない。
だんだんと興奮してきた。
いや、すでに心臓は激しく動き、顔は真っ赤になっていることだろう。
自分が興奮していることにすら気づいていなかった。
だが、まだ心臓がもっと早く動きだした気がした。
このまま股間に手を伸ばそうとしているのだ。
すこしずつ、手が下のほうにずれていく。
息をするのも忘れそうだ。
いや、へたに息をしたら周りから、異様に興奮しているやつだと思われるかもしれない。
激しい興奮をもちながらも、慎重に、
手を少女のおしりから、おしりの真中、谷間へとすべらせていった。
そしてさらにその下の股間へと、手を伸ばそうとしている。
少女は気づいているはずなのに、まったくこちらを拒むそぶりを見せない。
さっきから後ろを振り向こうともしない。
だが、体は硬く硬直している。
気づいているのだ。
だが抵抗できないのだ。
そう確信したとき、手は股間に届いていた。
少女はミニスカートをはいていた。
手は下着の上から少女を触っている。
柔らかい。
いや、言葉ではとても言い表せない。
それに少女にさわっているという事実が、高揚させる。
感触もさながら、自分の手が少女の、しかもスカートの中の下着の上から直に、
触っているという事実が、このうえない快感をもたらしてくれた。
麗夢は自分を触っている手を払い、神経を集中した。
集中しだしたら、再び触ってきても、簡単には気を散らさない。
混雑しているので、女の腕力ではなかなか掻き分けて出て行くことは難しい。
いや、そう判断したよりも、平常心を失っていたからこそなのかもしれない。
駅についた途端、麗夢と美奈の前に、電車のドアへと続く道ができた。
麗夢が夢守の力で、催眠術のように、周りの男達を操って、
２人がドアから出れるよう、どかせたのだ。
麗夢と美奈は卑怯な欲望が渦巻く痴漢電車から脱出できた。
涙ぐんでいた美奈はついに麗夢の胸にとびこみ、泣き出してしまった。
麗夢も行き場のない怒りを抱えたまま、美奈を抱きしめていた。